金魚の吉田!会長さんミニインタビュー前編~関東レポ5の続きです。
「金魚の吉田」そして日本動物薬品(ニチドウ)の
吉田信行会長へのインタビュー!
後編は金魚の輸出のお話やお好きな魚種なども聞いてみました(´∀`)
錦鯉と並び、以前は金魚の輸出も盛んだったんですよね?
昭和48年が金魚輸出のピークですね。
金額ベースだと当社で年1億40000万円ほどでした。
(@まつやま註:消費者物価指数で比較すると現在の貨幣価値の3倍以上)
輸出先はアメリカ、ヨーロッパ、香港などです。
金魚の本家、中国じゃないですか?
大きな輸出先だったんですか?
昭和43~48年の5年間、更紗琉金は全部香港へ行っちゃってたんですよ。
もうね、東京から更紗琉金がいなくなるんじゃないかって勢いで。
それぐらい現地ではメチャクチャな人気だった。
そうなんです。いませんでした。
業界全体では年7億円ぐらい日本から金魚を輸出していた。
世界の金魚は日本から行ったものだったんです。
だから金魚といえば、今でも日本を連想する方が世界には多くおられますよ。
明治になって、初めてアメリカに金魚が行き、
明治43年のロンドン大博覧会では金魚が出展され、
ヨーロッパの人たちが初めて金魚を見たんです。
そこで金魚イコール日本のイメージの先鞭をつけたんですね。
一方、中国にも江戸川から琉金、弥富から琉金、らんちゅうなどが渡って、ブリーディングが行われるようになったんです。
ええ。
中国は人口も多いし、ご存知の通り赤虫も豊富で価格も安い。
なので中国が輸出を始めた当初は生体の価格は現在の3分の1ぐらいでしたから。
そうですね。
そもそも金魚は歴史的に中国に生まれ、
1502年(室町時代)に日本に渡ってきた。
ところが渡来した頃は文献や絵画にはほとんど金魚が出てこないんですね。
当時は戦国時代、下克上の世の中ですから。
それが豊臣の世を過ぎ、江戸時代になり、
日本が平和になってから金魚は開花しました。
江戸時代に入り50年ほどで地金が作出されたり、
井原西鶴の歌にも金魚が出てきたりするようになる。
上野の不忍池の近くには「真鍮屋」(しんちゅうや)という大きな金魚屋ができ、
入谷には佐々木晋三という金魚問屋あった。
(吉田一族の本拠だった)本郷も近い。
江戸時代には、もうそうやって日本には現在に近いような(金魚流通の)カタチがあったんです。
一方、中国では文化大革命があったり、金魚を贅沢品として扱うような時代が長くあったようです。
生産でも輸出でも金魚大国になるのは、国情が安定してからですよね。
その辺は日本の戦国時代と同じ。
金魚は平和の象徴なんです。
残念ながら現在では日本から一匹も金魚は輸出してませんが・・・。
会長も金魚の輸出には携わられたんですか?
もちろん輸出も手がけてましたし、直接アメリカにも行きましたよ(笑)
アメリカにも金魚がお好きな人は多いですが、錦鯉の方が熱心な人は多いかな?
国民性の違いを感じることもありますよ。
例えばコイヘルペスが出た時、日本人はすごく警戒する。
愛好家が飼うのを躊躇うだけでなく、ホームセンターでも取り扱いを一斉に止めちゃったりするんです。
鯉や餌、ウォータークリーナーなどコミコミで、観賞魚の15%ほどが鯉の売り上げだったのが今は5~7%です。
欧米だとそこまで気にしない人が多いかも知れませんね。
人間に感染しないし「食べるものじゃない」という感じなのでしょう。
一番好きなのは琉金ですね。
琉金のどこに魅力を感じられます?
琉金のね、産地を見分けるのが楽しい。
これは弥富? これは東京かな? 大和郡山かな?と(笑)
中国の琉金だって、全部DNAは日本発ですから、判断するのが難しいですよね。
琉金をはじめ、中国も年々レベルが上がってきている。
国産と見分けがつかない金魚も増えました。
ただ、らんちゅうに関しては、池で飼ってるから尾が摘むんですね。
水槽で見るには申し分ないけど。
宇野らんちゅうなんかも持っていってブリードしてるんですが、やっぱり尾が開かないですね。
会長から見て、金魚の愛好家って今も昔も変わりませんか?
東京海洋大学の学長さん(岡本信明氏)が「どんぶり金魚」という本を出されてますよね。
話題になってますし、もう2万冊も売れている(取材時)。
あれの原点って巾着(型の金魚鉢)でもあるし、江戸時代のビードロ(金魚玉とも。小さい球体のガラス容器)でもあると思うんです。
当時は瓶で飼っている金魚をそこへ掬い、30分ほど入れて観賞して戻すというスタイルだったんです。
つまり「すぐそば」において見る、というのが金魚観賞の原点じゃないかと。
私もやってますよ。
らんちゅうとトサキンをどんぶりで飼ってますが、私の気配で金魚がすぐ寄ってくる(笑)
まだ1カ月ぐらいですが。
・・・お店側から見ると1尾ずつしか売れないじゃないか、と言われるかもしれませんけど(笑)
話は変わりますが、東京スカイツリーの「すみだ水族館」が銀座で行われた「ゆかたで銀ぶら2014」(8月3日)に出ることになった時、金魚の屋台(リヤカー)を復活させてみようという話になり、いろいろと探してみたんです。
弥富にもないし、大和郡山にはひとつ残っているけど貸し出せない、と。
ところが、さがみ水産(神奈川県)にあったんです。
私が電話して貸してもらい、業者が修理して配管などを手直ししたんです。
銀座でのイベント当日には金魚を持って行って、洗面器に頂天眼や水泡眼を入れたり、天秤での振り売りを再現したりしました。
炎天下だったけど、20分ぐらい並んででも皆さん見るんですよ!
好評だったのでスカイツリー(すみだ水族館)でもやろうという話になり、今、本格的にやってますよ。
(@まつやま註:取材当時です)
1800×600×600センチの水槽に、うちから金魚持って行ってます。
最初はすみだ水族館に金魚いなかったんですけど、
「金魚売りのリアカーこそ水族館の原点じゃないか」なんて話もしたりしてね。
昔は当たり前の風景だったとしても、うまく復刻すれば若い人も興味を持つんですね。
是非はありますが「どんぶり金魚」も金魚観賞の原風景だとすれば、過去あったものをプロデュースすれば、まだまだ金魚は人を惹き付ける、ということでしょうか?
はい。
金魚の持っているポテンシャルを引き出せば、世代がちゃんと回って、新しい愛好家さんが生まれるんだろうと思います。
青森県でのアンケート結果なんですが、面白いデータがあります。
一般の人に聞いて回ってみると「飼いたい」のはイヌやネコ。
一方で「飼ったことがある」・・・7~8割の人が金魚飼育を経験してるんです。
今は核家族が増えてますし、住宅事情もありますから簡単には動物は飼えない人も多い。
それでも、その結果を受けて「飼育経験があるなら売れるかも」と、あるお店で金魚を売ったところ、これが売れたそうです(笑)
「わいわいペットフェスタ」(2014年3月8日、さいたまスーパーアリーナ)というイベントで、2日間で5万人のアンケートをとりました。
「金魚で何を思い浮かべるか」の質問に対し、
1位「祭り」22%、2位「夏」、3位が「癒やし」、そして6番目が「安らぎ」。
「癒やし」と「安らぎ」を足すと21%になり、1位とほぼ並びます。
つまり、現代の人は金魚に癒やしを求めている、という側面も見て取れます。
金魚を身近に感じる「どんぶり金魚」も癒やしに繋がりますし、金魚見ていると興奮状態が下がっていくことを脳波で科学的に測定したという話もあります。
イベントで人だかりができるように金魚には強い訴求力がありますし、癒やしとして求められています。
金魚のポテンシャルはまだまだありますよ(笑)
金魚の平均寿命は10年以上あり、13~14年と言われています。
43年というギネス記録もあります。
夏の風物詩と言われますが、ひと夏で終わるようなものではありません。
少しでも長く飼って可愛がってほしいです。
丹頂も福だるまなんですが、2年になります。
実は赤虫ソフト(@まつやま註:ニチドウ製品です)で育ててるんですが、2年間ほとんど水換えしてないんです。
減った分を差し水するぐらいですね。
水も汚れないし、良いですよ(笑)
こんど使ってみます!
それにしても・・・金魚、お好きなんですね~(笑)
インタビューは以上です。
終始にこやかにお話くださいましたし、
昔の話から最近のことまで、かなり詳しくご説明いただきました。
会長さんの話を聞きながら「温故知新」という言葉が頭に浮かびました。
金魚や金魚飼育って、そういう部分があるからこそ私も惹かれ続けてるわけですし(∩´∀`)∩
それと、会長さんが力強く「金魚はまだまだポテンシャルがある」とおっしゃってたのが印象的で、すごく頼もしく感じました。
さて、この後は駆け足で「金魚の吉田」の店内を見て回りました。
その模様は次回!
レポートは続きます。
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