職場の後輩に紹介された本をご紹介します。
彼が仕事を通じて面識を得た、
小説家の荻原浩先生の新作に金魚がばんばん出てくると聞いて、
私も読んでみました。
このブログ「金魚ビギナーですが、何か?」では書評的なエントリーはあまりやりませんし、
私自身書き慣れてないので失礼や的外れも多かろうと思いますが、
先に謝っておきますm(__)m
いわゆる金魚を題材や題名にした小説やライトノベル、映画などは、
(それほど多く知ってるわけではありませんが)
たいてい、金魚は「弱くてキレイなもの」のシンボル的に描かれてて、
金魚そのものをちゃんとした扱ってるケースは少ない・・・
つまり金魚好きとして読んで面白いと思える「金魚」と題された作品は
経験上ほぼ無い、という先入観がありました。
(マンガ「バタアシ金魚」とか好きですし、作品そのものの面白さとは別問題です)
なので失礼ながら、この小説「金魚姫」(特設サイトはこちら)もそうだろうと、
先入観を持って読み始めました。
(すみません)
で・す・が!結論を申せば!
メッチャクチャ面白かったデス。
金魚好きとして読んでも、
純粋に小説としても。
ブラック企業に勤める主人公の青年が自殺すら考えていたある日、
朦朧とした状態で祭りの金魚すくいで1尾の琉金を掬う。
その琉金は金魚のルーツ、中国・普代に婚約者を惨殺された美しい女性の化身。
現代と平行して描かれる、いにしえの長崎や沖縄、そして中国・・・時と場所を変えて繰り返される復讐の輪廻。
主人公は金魚のことを学びながら、その琉金=女性といつしか心を通わせるが・・・
って感じのあらすじです。
(我ながらヘタだwwww)
読み進めると、ファンタジー要素もあり、ドラえもんなどの「同居モノ」的な描写もあり、
和んだ気分にさせられる一方、凄惨な描写が突然出てきたりして、
ぐいぐい引き込まれます。
会話のテンポがメチャクチャ良くて、思わずニヤリとさせらます。
水に入るか?と尋ねた主人公に対し、琉金の化身リュウの返事。
「・・・入る・・・自動車保険・・・いまなら査定無料(略)」
笑いだけでなく、ゾクっとさせられるシーンがいくつもあり、
(それは各自お読みいただくとして)
エンターテインメントとして極上の作品だと思いますし、
交響曲の主題のように繰り返される「すべては繋がっている」という言葉が、
どんどん意味深くなっていく構成は、まさに文学。
・・・なんてことは、文章を読むのも書くのも下手な私が書いても説得力おまへんわな(笑)
このブログで紹介する以上、やはり金魚ファンとして感想を書かねば。
この本を紹介してくれた後輩曰く、作者の荻原先生も
実際に金魚をお飼いになられてるそうで、
琉金に対する、こういう表現は、まさに金魚好きならでは。
(前略)だが、間近で真正面から顔を見ると、案外に可愛い。黒目がちで、ほっぺたがぷくりと丸く、口が携帯の絵文字の「ω」みたいなかたちをしている。顔だけ白いうえに、口の上下の縁が紅を塗ったように赤いから、いまにも言葉を喋りそうだった。
金魚の展示会&販売会や金魚店などが作中、場面として出てきて、
「仇役」(?)として登場する黒らんちゅうのほか、
いろんな魚種が紹介されているのですが、
文章の練達が書くとなるほどこうなるのか、と思える表現多数。
全編を通じて琉金が出てくる、って点も私好みですし、
描かれる舞台はいずれも金魚の歴史にまつわる場所。
私が大学時代を過ごした沖縄も出てきます。
また、主人公の勤める会社がお葬式関係なのですが、
@まつやまが金魚を飼い始めた当初、
交流させてもらってた方に複数、その業界にお勤めの人がおられたので、
すごく身近に感じてしまった部分もありました。
ラストシーンはもちろん言及しませんが、
金魚を飼ってない方でも、そして飼ってる方ならなおさら、
グッとくるものがあると思います。
金魚好きが書かれてるだけに、金魚好きが読んでニヤリとしつつ、
壮大な物語を楽しめる・・・というのが「金魚姫」の魅力。
そして完全に私見ですが、金魚は選別淘汰という人間の美に対する業を背負わされており、故に闇を内包した美しさや妖しさを纏っている。一方で、可愛さやユーモラスな仕草で人を癒やし、笑顔をもたらす・・・という特殊な存在。「金魚姫」は作品全体のトーンでそれを表現されているのではないかとも感じました。
2日間ほどでいっきに読みました(≧∇≦)/
読後、金魚、特に琉金を飼うのがさらに楽しくなりましたし、
(えびせんを餌としてやりたくなりますw 理由は読んでのお楽しみ)
金魚1尾1尾にもしかしたら輪廻転生の物語がある、と空想すると、
今までとは違った面白みも感じるようになります(私の場合は妄想ですが)。
琉金ファンならば装丁を見るだけで手元に置いておきたくなる一冊デス(≧∇≦)/
以上です。
金魚姫 |
▼クリックをお願いします▼
にほんブログ村