今日のレポート(?)は長文です。
読んでコメントされた方はエライです!(笑)
最後は金魚ネタになりますから、
頑張って読んでくださいm(__)m
★★★★★★★★
先月、@まつやまは高知県内で、
ある男と会った。
初対面。
あまり私に興味は無さそうで、
最初、淡々と話した。
が、言葉は徐々に熱を帯びてくる。
若いころ、大阪の地で
電気設計系の仕事をしていたという。
兄に乞われて故郷へ戻った。
親から受け継いだ田で取り組んだのは
ドジョウの養殖だった。
なぜ?
私は問うた。
都会から田舎へ。
電気からドジョウへ。
脈絡が無さそうに見える。
男は少し遠い目をして語った。
ふるさとの記憶・・・
青々とした山、広がる田畑、
そして流れる小川。
そこにドジョウが居た。
日本のドジョウは危機的状況にある。
自然界では各都道府県が指定する
絶滅危惧種に入ってきている種類もある。
近年、養殖も減ってきている。
男は訴える。
日本の天然記念物のトキが食べてるドジョウ、
国産ドジョウで賄えてなかったこともあったんですよ。
これで良いんですか、と。
ふるさとの原風景、そして危機感が、
「次の道」へ導いてくれた。
一方、そんな叙情的な話の裏には、
したたかな計算もあっただろうことは
想像に難くない。
我々の食事としてのドジョウは、
確かに日常から遠い存在になった。
ただ、なくなることもない。
養殖する人たちが減っているなら、
それは純然たるビジネスチャンスでもあったはずだ。
男の話は養殖のポイントに及んだ。
ドジョウは逃げる。
飼ったことがあれば分かるが、
確かにドジョウの逃げ出すことに対する
情熱は凄まじいものがある。
飛び出し、這い出し、新たな水辺を探して、
死を賭して逃げる。
養殖するということは、
ドジョウの逃亡との戦いでもある。
養殖していた池から飛び出したドジョウが、
畦で大量にのたうってる場面も見たことがある、という。
彼は養殖池…というより、水深から言えば田に近かっただろう…に
工夫を施した。
逃げたいのならば、
逃げ出すための場所を予め作っておけば良い。
逃亡防止の囲いを一箇所ゆるめにしておく。
そこから決死で逃げ出したドジョウが得る新天地は、
元いた池と変わらぬ養魚池、という寸法だ。
池のレイアウトへの工夫はそれだけではない。
ドジョウは岸が好き。
確かにドジョウは池や小川の真ん中にはいない。
網で採るにも、水の真ん中を探したりしない。
木や草に隠れてるドジョウを狙い、岸で網を振るう。
人工的に環境を用意しても、それは同じ。
どれだけ広い池でも、
ドジョウは岸に集まり、
結果、過密飼育になってしまう、という。
面積あたり収量は当然少ない。
従来のドジョウ養殖は、
そんな感じだったという。
ならば。
池の中に岸を用意してやれば良い。
田の中に畦を幾筋も作る。
そうすれば、ドジョウの住みやすい岸が、
いくらでも作れる。
劇的に収量が上がった。
男は具体的に数値を挙げて説明したが、
そこは覚えてない。
ただ、米作りよりは遥かに採算性が高いこと、
そして、男がこの日一番の笑顔を見せたのは覚えている。
池と畦の形を指で描いて見せつつ。
ドジョウがね、潜るんですよ。
ドジョウがね、集まるんですよ。
ドジョウがね、すごいんですよ。
男のドジョウへの愛が、
会話の端々に窺える。
ところが。
数年前、国道が建設され、
男と兄が作ったドジョウの王国は、
土地の一部と、静かな環境を失った。
その場所での養殖は、
諦めざるをえなかった、という。
それでも男は、
ドジョウとの関わりを断たなかった。
養殖のコンサルティングという形で、
他県まで…私が会った時は東北へ
出かける準備中だった。
そしてドジョウへの愛は、
思わぬ方向へ影響を広げていた。
ドジョウ養殖における、
男の工夫は池だけではなかった。
それは餌。
強いこだわりを持っていた。
最終的には、人か他の動物の胃袋に収まる運命のドジョウ。
太れば良いと考えてしまう気がするが、
男がドジョウに用意した餌は、
ドジョウが喜ぶもの。
そして健康的に大きくなるもの。
曰く、
ドジョウがおいしいと思わなきゃダメです。
人間だって味気ない食事ばかりだったら不健康になる。
一緒ですよ。
ドジョウが喜ぶものを考え抜きました。
魚にとって美味しいものを与える。
確かに正しい考え方だと私も思う。
観賞魚において、嗜好性は餌選びの中でも重要な要素。
だが、養殖はコストとの戦いでもある。
美味しさ優先ってあり得るのか?
話を聞いて、一瞬ファンタジーとも思えた。
しかし、男の強い思いはドジョウだけでなく、
他の魚にまで受け入れられていくことで、
正しさが証明されている。
最初は熱帯魚。
ドジョウ用に作った餌を、
知人が熱帯魚にやったところ、
調子がすごく良かったのだという。
よく食べるし、水も汚れない。
熱帯魚用に餌を作り、
パッケージングして商品にした。
ほどなく、金魚の愛好家・・・
しかも土佐錦魚の愛好家がその餌に目をつける。
西日本を代表する土佐錦魚の愛好家から、
意見を聞きつつ、
土佐錦魚に良い餌・・・もちろん、
土佐錦魚にとって美味しい餌を作った。
消化のことを考えて、
つなぎに小麦粉を一切使わない。
その代わり、海藻を使った。
植物性の成分は、雑食の金魚にとって、
消化の助けをする。
コケをいっぱい食べる土佐錦魚には尚の事いいだろう。
海藻に含まれるフコイダインは、
免疫力をアップする成分でもある。
ツナギとして使いやすい海藻を探し、
吟味に吟味を重ね、
海外で採れる特定の海藻を選定。
輸入することにした。
餌のパッケージに使いたい写真があった。
男が「これだ!」と思い、惚れ込んだ土佐錦魚の写真。
関東…土佐錦魚界を代表する重鎮が創った魚だった。
男が思いを伝えると、重鎮は写真の使用を快く許した、という。
その餌こそが、
土佐姫。
そして男は、
「どじょう養殖研究所」を運営している。
私が金魚を飼い始めてすぐ出会い、
ずっと使い続けている土佐姫。
手放せない理由(わけ)が、
分かった気がした。
★★★★★★★★
というわけで、思いがけず、
どじょう養殖研究所の方と、
お話させていただきました。
土佐姫は土佐錦魚はもちろん、
丸手の金魚を飼ってる方にとって、
いまやスタンダードと言える餌だと思いますが、
話をうかがってみて、
あらためていい餌だと思いました。
この他、土佐姫の販売手法についても
話を聞かせていただきました。
「各地の街の金魚屋さんに頑張ってもらいたい」という思いから、
ホームセンター1社を除き、
小売店での取り扱いを優先しているとのこと。
そういえば、大手ペットショップなどではほぼ見かけませんね(;・∀・)
土佐姫を置いてるお店はいいお店!
って印象があるのは、そういうことか、とナットクヽ(´ー`)ノ
文中に出てくる、どじょう養殖研究所さんの熱帯魚の餌は「グロウ」。
金魚向けは、土佐姫のほかに
らんちゅう向け「らんちゅう貴族」などのラインナップがあります。
文中、「男」呼ばわりして、すみませんでした。
一介の愛好家・・・ド素人に、熱心に説明していただき、
本当にありがとうございました。
※同研究所さんは、通常、愛好家の訪問は受けてないと思います。
今回は特別なお取り計らいにより、お話を伺いました。
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