ミラクルバクテを開発された、らんちゅう界の巨星、
静岡県三島市の佐藤実さんが昨日(28日)午前、
お亡くなりになりました。享年60歳。
らんちゅうにおける業績は、
私は正直、詳しく存じ上げませんし、
述べることもできません。
@まつやまは、ミラクルバクテを通じて知り合い、
何度かお話をさせていただく機会がありましたが、
会話の大半はミラクルバクテか、金魚そのものの話。
賞のことや会のことなどを
ご自身で語ることはありませんでした。
伝え聞くところでは、日らん全国大会で何度も賞を獲られ、
地元愛好会の要職も長く務められたそうです。
「本当の意味での系統」をご自身で作り上げ、
らんちゅうの「作り手」として全国屈指の存在で、
佐藤さんのらんちゅうを手に入れるために、
全国から愛好家が足を運んでいる…
これぞ「らんちゅう師」という方だったそうです。
佐藤さんのらんちゅうに関しても、
私は寸評するような立場にはありません。
小学生がモーツァルトを論じるようなものですから…
ただ、初めて直で見た時は、
「スゲェ!ぶっといけど、バランスがすごく良い!」と
素直に思いました。
らんちゅうに詳しい方によれば、
凄まじいカシラ、
飽くまで太い尾、
美しい背中…
得難い、素晴らしいらんちゅうを
佐藤さんは「系統」にしたのがさらに凄いのだそうです。
良い魚を作ること自体がとても難しい。
良い魚がバンバン出てくる血筋を固めることは、
余人にはできない…
私の知り合いの何人もが、
「佐藤さんのらんちゅうは、見たら分かる」
と言ってるのを聞いたことがあります。
また、金魚の愛好家なら誰もが知っている餌、
「ちゃんこシリーズ」を監修されたのも佐藤さんだったそうです。
私も「ちゃんこ金星」は常にストックを持つぐらい使っています。
寒い時、調子を崩してないか疑わしい時、
病気の時の少量の給餌など、
これがあれば、すごく心強いですから。
そういう意味では、らんちゅう界のみならず、
金魚業界にとって、大きな功績を残した方でした。
でも、そんな輝かしい来歴を詳しく知るまでもなく、
私にとって佐藤さんは魅力的な人でした。
職人気質の鋭い眼光、
らんちゅうに賭ける情熱が溢れる語り口、
そして気風の良さ。
反面、茶目っ気たっぷりで、
よく笑い、人を笑わせる人。
大物ぶったところが全くなく、
本当に気さくで…
繊細な気使いができる。
失礼を承知で言えば、
「チャーミングなオヤジ」でした。
@まつやまが昨年11月、
大阪で開かれた日らん全国大会(社団法人)にお邪魔した時、
佐藤さんには本当にお世話になりました。
この時、佐藤さんご自身もらんちゅうを
出場させておられましたが、
会場のあちこちを飛び回り、
役員の方、愛好家の方たちと
寸暇無く話をされていたのが印象に残ってます。
いわゆる「大会役員」ではなかったようですが、
「顔役」って感じの存在だったのでしょう。
審査中の話ですが。
審査員や魚係以外は、
審査場所には入れないので、
一般見学者は、こんな感じでしか撮影できません。
全国大会ですから当然です。
「う~ん、これはちゃんと撮れないなぁ」と
私が諦めて突っ立ってると、
そこへひょっこり佐藤さんが来られて、
「まつやまさん、せっかく遠くから来たんだ!中で撮りなよ!」
私が「いや、許可が無いとダメですよ」と言うと、
「許可ね!許可許可」とつぶやきながら、
どこかへ行ってしまいました。
で、すぐにひょっこり帰って来たと思ったら、
「オッケー!許可取ったよ!いいって!中で撮りなよ!」
ニコニコ笑いながら事も無げにおっしゃる。
…らんちゅうなんてほとんど知らない、
単なる金魚好きの私が、
全国大会の審査場所に入って良いのか!
かなり恐縮しましたが、
こんなチャンスは二度とないと思い、
甘えることにしました。
というわけで、こういう写真が撮影でき、
審査の詳しい様子をブログに書くこともできたのでした。
実は撮影中、事前にちゃんと許可を取った撮影スタッフ(オフィシャル)の方から、
睨みつけられたりしてたんです。
そりゃそうですよね。
@まつやまは腕章も何もしてないし、
突然、途中から審査の様子を撮り始めたんですから。
カメラマンの1人がよほど我慢ならなかったのか、
私にツカツカ歩み寄って、
「どちらさんですか?許可ないと入れないんですよ、ここは!」と
若干厳しめに注意されました。
私が「許可はもらって・・・いや、先ほどもらいました」と
おどおどしながら答えると、
そのカメラマンさんは信じられなかったんでしょう、
「誰からとった許可ですか!」と詰問(((( ;゚д゚)))
私はカメラマンっぽいベストとか着てないし、
背広姿でもなく、普段着でしたから…
信じられないのもの当然といえば当然。
@まつやまは半ば諦め、審査場から出るべきだなと思いつつ、
「あ、いや、佐藤実さん経由で本部に許可はもらってはいるんですが…」と
勇気を振り絞って答えました。
するとカメラマンさんの顔色がサッと変わり、
「あ、そうですか。佐藤先生の…それは失礼しました」
と逆に謝られました。
…その時、実感しました。
佐藤さん、どんだけ大物なんだ!と。
そんな大物にも関わらず、
佐藤さんはすごく優しい人でした。
なぜか@まつやまのブログをよく読んでいただいてたようで、
我が家のヒドジョウが死にそうかも、と書いた時には、
翌朝、知人を通じてお見舞いメッセージ(?)が届きました。
「ミラクルバクテを飲ませてみれば?」と。
ミラクルバクテを飲ませるまでもなく、
ヒドジョウは実は元気で、今も琉金水槽でのんびり泳いでます。
変な姿勢で寝てたのを私が大騒ぎしただけでした。
でもその時、佐藤さんの細やかな気遣いを感じると同時に、
「らんちゅう界の大御所・佐藤実がヒドジョウに反応するんだ」と
笑いをこらえきれなかったのを憶えてます。
私が佐藤さんとお付き合いさせていただいたのは、
短い期間でしたし、お話させていただいたのも数えられるほど。
私はらんちゅうの良し悪しがまったく分からないので、
本当の意味で佐藤さんの凄さを知らないままだったと思います。
そこは完全にネコに小判でした。
だけど、すごく可愛がっていただいたと思いますし、
私は人としての佐藤さんが大好きでした。
先月、病院にお見舞いに行った時、
「退院したら、またウナギ食べに連れてってくださいよ」と
甘えてみたら、
「ヨシ!まつやまさん!三島で一番ウマイ店に行こう!」と
とびきりの笑顔を見せてくださいました。
その約束が叶わなかったのが残念でなりません。
今回、仕事の都合と天候のため、
通夜・葬儀に駆けつけることもできないのも、
悔しくて仕方ありません。
でも、きっと佐藤さんはこうおっしゃると思います。
「いいんだよ、まつやまさん!
オレの魚は全国にいるんだから!
また逢えるよ!」
こころよりご冥福をお祈りします。
・・・・・・・・・・・・・
通夜は本日(9月29日)午後6時より、
葬儀は明日(9月30日)正午より、
セレモニーホール三島平安会館
静岡県駿東郡長泉町下土狩71-11
JR三島駅から徒歩5分
【付記】
関係者によると、ミラクルバクテの製造販売は、
今後も安定的に行えるそうです。
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